婚約史は指輪史なり

婚約の歴史は婚約指輪と関連づけてみていく必要があります。なぜなら婚約をした証として男性から女性へ贈る契約の印の意味合いが強いからです。古くは古代ローマ時代にまでさかのぼります。当時婚約と言うよりは、男性が女性を買い取る際の代償として鉄の指輪が贈られていたという説と、永遠の愛を約束する誓約書の代替に鉄の指輪が贈られたとする説とがあります。

いずれにせよ、指輪は婚約をする上で大変重要な役割を果たしていた事がわかります。婚約の歴史は結婚の起原よりもはるかに長く、まだ結婚概念が形になる前から、社会に根付いていました。婚約を内外に公表した時点で夫婦同等に視られていましたから、簡単に婚約を破棄するなどという事はほとんどなく、特に10世紀前後には法的規制も置かれていました。それほど婚約とは強力な影響力を持ってカップルを精神的にも支配するものだったのです。婚約指輪をはめる習慣が定着したのは、だいぶん後になってからです。今のようにダイヤモンドの研磨技術おろか、指輪の細工技術もありませんでしたから、指輪と言えば鉄のリングだけでした。従って今日のようにロマンチックなムードを指輪に込めるなどという発想はみじんもなかったのです。

アジア諸国では、未だに婚約指輪をはめる習慣はありません。指輪は切れ目のないリングの形をしています。その形が永遠を象徴するものとなり、やがて神秘主義や魔術とも結束して、人々の精神世界や生活をもしばるようになっていきます。今回は婚約の歴史についてお話します。